Scene.42 本屋から、LOVE&PEACE!
高円寺文庫センター物語㊷
「ちっす!」
「あれ、石川ちゃん。ち~っすが、短いじゃないっすか」
「だって、店長。
いま帰られたのは、森本レオさんでしょ。空気、読んで静かに入ったんじゃないっすか。しっかし、レオさんは生声いいっすね。初めて、拝聴しましたよ」
「はい、ちょ~!
でしょ、高円寺の財産っす。あのお声で、『領収書お願いね』なんて言われちゃ、意識も飛んじゃうのよ。
昔、レオさんファンのバイト女子が固まったって、わかるでしょ!」
「おい、クロちゃん!
こっちに来て、石川ちゃんの営業スタイルを見習っとけ。出版社の営業マンを目指したいなら、極上の営業を目の前で見られるぜ!」
「店長、やりにくいっす!
定番売れ筋の『映画秘宝』は、前号と同レベルなので配本数でいいでしょ。こちらの新刊書籍で文庫センターさん向きなのはっと」
「クロ、わかるか?!
うちでめちゃ売れの『映画秘宝』でも、特集が通常号より売れると判断した時は配本数プラスってアドバイスが入るのよ。
新刊書籍が多めにあったとしても、営業先の個性を把握しているから返品になるような版元よかれの営業はしないの!」
「でも、石川さん。店長が言われる、店内を見て回ってからの挨拶なしに来ちゃいますよ」
「そっか。
見てごらん。営業を終えたら、店内をくまなく見ているだろ。彼のパターンなんだよ、そいでがっつり買って行ってくれるからね」
「ベテランの領域なんですね!
自分の営業スタイルを築き上げるのが、訪問先の本屋さんに受け入れられる第一歩だとわかりました」
「あとな~口臭。ニンニク臭パスな!
本屋っつうか、接客業をしていたら当然ニンニク臭で餃子は自粛でしょ。あ、石川ちゃん。こんなに買ってくれていいの?!」
「問題ないっす!
って、ことより。お手伝いで、お誘いのあった清志郎さんの野音ライブ。夏休みで、行けないっす」
「いいっすよ!
秋は万治の石仏、長野の温泉にGO! さわっちょは行けないから、次にみんなで那須のつげ義春の秘湯宿に行こうぜ」
「そうですね。
店長は、定年後遊ぶのを楽しみにしていましたもんね」
「あは、年金だけでの楽隠居なんて無理だからさ。バイトくんに、ならなくちゃだよ!」
「店長。
清志郎さんの、野音コンサート販売商品リストができました」
「イェイ♪りえ蔵、これってパソコンのエクセルか?
たいしたもんだな、めっちゃリストっぽいじゃないの。メールに添付して、清志郎さんのマネージャーさんに送ってくれるか」
「OKを、いただいたら発注は店長ですよね?!
日比谷野外音楽堂で、キャパ3000人のお客さんを相手にする、物販スタッフの確保は大丈夫なんですか?!」
マスコミに「カリスマ店長」とレッテル貼られもしたが、冗談じゃない。クレバーな、バイトくんたちのお蔭の虚像なんだぜ!
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